病院・ホスピスによる心のサポート
さて、今回ボストンで受けた集中講義は音楽療法@ホスピスがテーマ。
ホスピスの存在の仕方がアメリカと日本では全く違うので、そのまま当てはめることは出来ないのですが、色々勉強になりました。
知ってはいたけれど、患者さんと家族を心理的にサポートする体制が、日本は0に等しくアメリカは本当に手厚い。その違いに驚愕した。
肉体的なニーズだけでなく、心理的・社会的・家族間の問題におけるニーズが確実にあり、ホスピスはそれを「プロフェッショナル」によってカバーされなくてはならない、という認識は日本にはほとんど見られないものです。
アメリカはいわゆる日本にある国民保険がないので、医療費は自分が入っている医療保険と自費で賄わなくてはならない。癌の手術をして翌日退院ということも普通にある。日本人からみると、なんだか放り出されるように感じるが、長く入院すればその分患者が負担する経費が高くなるので、短期入院、というのはお互いにとっていい選択なのだ。
アメリカの病院は、よりより医療技術のみならず、サービスを提供することで病院の評判を維持し経営をスムーズにしようという意図がある。そうでないと、経営難に陥ってしまい、当たり前のように病院を閉鎖しなくてはならない結果になってしまう。(これまでの日本では、病院を「経営」するとか、「利益を上げる」というのはタブーな概念だった。この状況は変わって来てはいるが。)
それで、退院したからといって、家で放置されるわけではなく、看護婦・ソーシャルワーカー・各種セラピスト・チャプランなどが頻繁に家を訪れるサービスを行い、患者とその家族のニーズを汲み取るのに余念がない。
勿論、入院中もそれらの専門家達が医者とともにケアチームとして関わる。
心のサポートをする専門家が一人も関わらないなんてありえないのがアメリカだ。
日本では、患者さんや患者さんの家族の話をきくのは基本的に看護婦さんがやっている。
それだけ、人の心の存在を日本は甘くみていると私は思う。
患者さんの心だけではなく、看護婦さんの心も含めて。
そもそも人の心をサポート・ケアするのは素人には大きすぎる課題なのに、それを看護婦さんが仕事の合間にやる、ということは、患者さんに十分なケアを提供できるわけがない。、しかし、そういう認識は病院側にはあまりない。看護婦さんが話しを聞いてあげているから、気持ちを受け止めてあげているから大丈夫でしょう、みたいな感覚。
アメリカの基準を経験した私からみたら全然大丈夫じゃないのに!!!!
また、話をきいてあげる看護婦さんは本人や他のスタッフが認識している以上に、心に大きな負担を蓄積している。心の専門家のような役割を果たさないかもしれないが、患者さんや患者さんの家族が吐露する重たい物・ドロドロしたもの・悲しい物を「聞く」だけでも、そうとうな心的エネルギーを消費する。人の心を扱う専門家でないがゆえに、余計な負担を負う場合もあるだろう。
アメリカの医療体制が素晴らしくて日本はダメ、と言うつもりは毛頭ない。
でも、包括的に患者さんと患者さんにとって大事な家族をケアする、という点においては、日本はアメリカに学ぶ物が沢山あると思う。
ちょうど篤子さんの滞米中に、NHKプロフェッショナルで「がん看護専門看護士・田村恵子さん」の放送があったようですが、ご覧になりましたか。比較的新しい看護婦の上級資格だそうですが、日本ではこのように、資格を「分ける」のではなく「重ねる」方向に進んでいるのかな、と少しひっかかりました。ご感想をぜひお聞きしたいです。7/6にBS2で再放送されるとのことです。
mayumiさんの視点、
資格を「分ける」のではなく「重ねる」
というのはなるほど、的を得ていると思いました。
専門家があつまって最強のチームをつくろう、というよりは
個人(の医師・看護婦・セラピスト、Etc)が腕を磨き、そのひとを神のように奉る傾向が(なにもそれは医療界だけではないですが)あるような気がします。
その人の意見には誰も逆らえない、というような。
一人の力って、その人がどんなに優れていても限界があるとう事実に、上に立つ人も、その人を慕う人も目を向けていない。残念なことです。
7月6日の放映、状況が許せば見てみたいと思います。
今日、内輪の講演を聴きに行ったのですが、講演テーマがホスピスにおけるスピリチュアルケアといったようなものでした。
数十分の短い講演で、エッセンスだけをかなりかいつまんでのお話だったので、詳しいことは聴けなかったのですが、その講演を聴いていてtotoatuskoさんがときどきブログに書いていらっしゃることを思い出したので、コメントとして残しておこうと思いました。
ご存知かもしれませんが、カール・ベッカーさんという方で、京都大学で教授をされているそうです。こころの未来センターというところにも所属されているようでした。著書がたくさんあるそうなので、私も今度読んでみようと思っています。どんなふうに参考になるかまだわからないのですが、何かしら得られるものがありそうな気がします。死に関わるあらゆる人に関わって来られた方だそうです。