人気ブログランキング | 話題のタグを見る

カウンセリング@代々木上原・音楽療法・心理療法 GIM

totoatsuko.exblog.jp ブログトップ

ノーフォルト

ノーフォルト_d0065558_9373195.jpg現役産婦人科医が書いた若い産婦人科医が主人公の小説ノーフォルトを読んだ。フィクションだが、現場の医師たちの迷いや苦悩、患者さんやその治療に対する熱い思いなどが、とてもリアルに描かれている。

小説とはいえ、必死に患者さんと真摯に接し、日々新しい知識と腕を上げるため邁進しているお医者さんに出会え、なんだかとても嬉しかった。反面、医師としての哲学を築くまえに現場の最前線に出た場合、患者と接しかたや治療中何かが起こったとき、迷いや苦悩が生じるか、自分の精神がばっさりと斧で切りつけられるような傷を負ってしまう危険性を改めて感じた。


医療関係者の心のケアをする人の存在の必要性も強く感じた。
一般の患者さんとその家族の心のケアをするための整備すら日本は出来ていないから、そんな必然性唱えたところで、誰も賛成しないと思うけれど。それは、もしかしたら心に痛みを抱えている医療関係者の無意識のうちのdenial(否定)/avoidance(逃避)なのかもしれない。 ちょっとでもつっつかれると痛みが流出してしまうくらい心が傷ついているから、あえて大丈夫だといいはる。

その小説に登場する医師たちも言っていたし、私が知っている医師が言っていた事を思い出した、今の医療訴訟のありかたのままでは、医者が誇りと自信をもって、患者さんのために最善をつくせなくなる、という旨を。

人が死んだり後遺症が残っておいて、医者だって人間だからミスや見落とし手術の出来のよしあしがある、というのは言い訳にしかきこえないかもしれない。しかし、人間は完璧じゃない、これまで最高権威の名札の一つであるかのように患者があがめていた状態もみなおす必要がある。新しい医療を全て即座に自分のものにできないからといって、その医師こじんの問題ではない。それに、担当医師だって、誰ひとりとして、残念な結果を望んで患者さんと接しているわけではないのだ。残された家族の気持ちと比較してもしょうがないことだが、医師だって自分の患者さんが命を失う、というのは悲しいことだし、場合によってはPTSDを引き起こす。

勿論、患者さんを対等の人間としてみなしていないような、横柄な接しかたをする医師・治療計画を立てる医師もいるが、その人を責めるよりは、どうしてそういう医師が生まれたのか、医師として生存できるのか考える必要がある。医師になるための教育・先輩医師の背中・医療界の慣習・患者の態度。

小説には、医療訴訟の現状について著者である現役の医師の思いが述べられているだけでなく、医師の労働環境の悪さにも触れている。よく書けた医療小説です。
by totoatsuko | 2007-10-05 23:13 | Comments(0)
line

音楽療法士(GIM)のつれづれ


by totoatsuko
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite