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密輸 という夢

夢 は、その人の無意識からのメッセージを含んでいたり、
夢を見る事によって、心が自主的にその状態を安定させたり、バランスをとろうとしたり、
今の自分の心の状態を 夢というストーリの中で表現し、心的エネルギーを発散させている、
と ユングは言っているし、私もそう信じている。

エゴや、日常自分を動かしている意識の表層や、刷り込まれた価値観みたいなものが機能する意識の層より、ずっと深い部分、自分の中心に近い部分で、自分を感じる方法。

GIM(Guided Imagery and Music therapy=音楽心理療法)セッションでは、音楽を使って、その現象を体験する。夢なら忘れてしまうが (それは、その夢のメッセージを認めたくない、と思っている自分の一部の仕業かもしれない)、セッションでは私もそのイメージを共有し、ノートに綴っていくので、忘れることは無い。

そして、心は、夢占いなどの本に書かれているようなお決まりのパターンで判断することは、決して不可能である。同じ木のイメージを見ても、個人個人によって、その意味合いが異なるからだ。

ある少年が、自分と女性が、麻薬を密輸しようとしている夢を見た。空港でX線を突破するために、メントス(タブレット)のような形にしたらいいんじゃないか、どうしようか、と思案しているという話。

この人の日常で起こっていることは、家族に内緒で、ここ数年間 色んな小説を読み漁っていることだった。彼の両親は、本を読む時間があるなら勉強しなさい、という人たちだったので、内緒で本を買い、買った本は見つからないようにし、通学や親が外出中、あるいは寝静まったあと、貪るように時間を惜しんで読んだ。

夢に出てくる男女は、日常では密輸人というアイデンティティーを隠し、ごく普通の人として生活しているのは、少年の日常の感覚と同じである。ただ、密輸することにより、隠れて本を読むことにより、そこで得られる価値は倍増する。

もし、麻薬が合法化されて、風邪薬のように薬局で誰でも買えるようになったら、その価値は暴落するだろう。それと同じで、この少年にとって、隠れて、限られた時間と場所で本を通じて異世界と心を触れ合わせることにより、その時感じる自由や、現実逃避が、大きな力・意味合いを持って心に作用する。

この夢は、少年にとって本を読むことは麻薬を密輸することほど危険なこと(=両親にみつかるとかなり危険な状況に追い詰められる)であるという反映であるとともに、日常のストレスや両親との関係を切り抜けるために必要な膨大なエネルギーを、その隠れた行為から受け取っている。麻薬を密輸する夢は一見全く関係ない少年の本を読む行為がつながり、その夢の意味合いを、わたし達は丁寧にほどいていき、脅迫的な両親の元での生活を切り抜けるための手段として、彼は隠れて本を読む(=自分の好きな事をし、そのプロセスでは両親の圧迫から自由になる)ことの意味合いを発見した。

一人で 夢の意味を理解しようとするのはなかなか難しいかもしれないが、
夢には本当に豊かなメッセージが含まれている。
夢日記 なるものをつけて、そこで感じたものを 色にすると、その夢が自分に何を語りかけているか気づくきっかけになるかもしれない。
by totoatsuko | 2006-11-15 13:55 | GIM:音楽と深層心理イメージ | Comments(0)
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心理療法士のつれづれ ー音楽、アート、ユングの視点からの対話と変容


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