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閉鎖的な子育て

少し前、0歳保育強化(0歳から子供を預かる公立保育園のキャパを広げる)に政府が資金を投入するとかしないとかの議論があったとき、4、50代男性議員が最低1才までは母親が面倒をみるよう推進すべきだ、と言っていた。

この男性は、何を根拠にそうするほうがいいと言っているのだろう?と首を傾げてしまった。

今、大所帯の古い日本の家族の形が保たれている家庭は少ない。
地域というサポートシステムも昔のようには機能していない。
もし孤立した母親一人に 24時間365日 乳児の面倒みさせるというのなら その女性と子供の精神をおかしくするための手段としか私には思えない。虐待が起きてもおかしくない。

やってみたことがない人にはわからないかもしれないが、
この世に生まれたてで、動けなくて、ただミルクを飲んで排泄して、泣くだけの人間でも、
いやだからこそ、その人間と愛情たっぷりな関係を築くには、相当なエネルギーが要求されるのだ。精神的なエネルギーの消費だけではない。私の場合、乳房からミルクを吸われるのは、まるで血液を吸い取られるような感じで、急激に疲労を感じたし、夜もおよそ2年間(妊娠期を含む)、続けて3時間以上寝られない。

なにかしようと思えば、常に自分のために加え、新しい人間の準備もしなくてはならない。
最初の頃、わたしはよく忘れ物をしたものだ。気がまわりきらないのだ、準備すべきことが多すぎて。
一人で出かけるときは、さっと上着を羽織って出ればいい。
でも、乳児がいたら、オムツやらタオルやらミルクを暖めるだの、細かなステップがたくさんあって、慣れるまでそれにすごく時間をとられたし、それをするだけで玄関にたどり着く頃には疲れ果てていた。

それに加え、さまざまな機能が発達する、そしてその後の人生に大きな影響を与える人生最初の1年の間、母親だけが接触する人間というのは、実にもったいない。0歳保育で、保育士さん、自分より年下、年上の子供達と触れ合うことは、子供にとって大きな学びの場なのだ。
実際、世の中には、母親のような人ばかりではないのだから、いろんな人、空気、食べ物に触れることは、とても意味がある。

子育てで忙しくされているお母さんの中には、とても閉鎖的な生活を送っている人が多い。
誰かと触れ合うエネルギーが、子供の世話をするだけでなくなってしまう、というのも理由だし、公園デビュー なんて言葉があるように、でたら出たで、母親同士のいじめとか、複雑な人間関係があるようだから、それに加わるのは億劫になるのも当然。先に記述した、出かける前の準備のめんどくささに加え、出かけても子供がぐずると、どうしよう、という心配もある。

そんな閉鎖的な生活では、ますます子供もも閉鎖的になってしまう。
そして、ある日突然 幼稚園に連れて行かれ、登園拒否になってしまっても、しょうがない。

お母さん になった人も、一人の人間であることには変わりないのだ。
誰かをケアするには、自分が栄養を得られるルートを確保し、満たされていることが必須だ。
それなのに、妊娠期を含め1年以上の間、社会から切断され、精神的なサポートもなく、うば と家政婦業務に専念しなさい、というのは、なんと乱暴な発言ではないか。虐待が起こっても、仕方がない。鬱になっても仕方がない。

保育園に赤ちゃんを預けて、家でボーっとしているお母さんを批判する人もいるが、もし、そのお母さんにとってぼー っとすることが いい状態で子供に接するのに必要ならそれでいいではないか。

0歳保育、その保育内容・質の保証は大事だと思うが、もっともっと受け皿が増えるといいと思っている。そして、お母さんがフルタイムで働いていなくても、子供を受け入れてあげて欲しい、子供の豊かな成長のためにも、お母さんのためにも、そしてひいては日本全体のためにも。
by totoatsuko | 2006-11-14 10:26 | 日々感じたこと | Comments(1)
Commented by amayatic at 2006-12-05 10:34
虐待する母親の中にはとんでもない冷酷な人格障害者(この概念も多分に問題ありなことは私のblogに掲載しておりますが)よりも、子供を愛しているのだけれどどのように接してよいか分からず、それを誰にも相談できない方が多いということは常々主治医より伺っております。児童相談所のシステムも不備が多く、何らかのNPOが立てられないかとも考えておりますが・・・。
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