ちょっといい話

「昨日なにか特別な事をなさいましたか?」
お話をきいたところ、
いつも帰宅後はおもちゃを部屋じゅうに散らかして、TVをつけて遊ぶのに
その日は、お母さんが夕飯の準備をしている間じゅう横にいて、お話をしてくれたのだそうです。まさに静 と動。
それから、夕食では、嫌いでいつも食べない野菜を、文句も言わずパクパクと食べ、
いつもは電話で話したがらない相手に、電話をかけてくれるようお母さんに頼み、電話口では、先日品ものを送ってくれたお礼を、丁寧に伝えたのだそうです。
話は、ここで終わらず、いつもは下の兄弟とケンカを始めるところ、
その晩は、ケンカをふっかけられると、口に人差し指をあてて「シーッ」となだめたとか。
セッションでは特に、何か魔法をかけたわけでもなんでもないのだけど、、、
ただ、彼女のたたくドラムのリズム、テンポ、ダイナミックスに全身全霊をかけて注意を払い、
音に転換された彼女のコトバに耳をそばだて、彼女のみせてくれた“世界”に入って、
おなじ言語を使うことを試みをしただけ。
もしかしたら、
彼女がイニシアティブをとるまで待ったり、
彼女のやり方を尊重して、彼女のやり方でコミュニケーションをとろうと、
こういう形で試みた人は、彼女のこれまでの人生でいなかったのかもしれません。
発達障害があると、人生のうち、いつも物事を教えられて、その通りできるように努力をしないといけない状況が、多々あります。
そんな中で、あの10分間は、他人が、彼女のやり方を学び、より沿おうとした、
彼女にとって新鮮な体験だったのかもしれません。
ああ、自分のやりかたでも、人にわかってもらえるんだ、分かろうとしてくれる人がいるんだ、
自分のやり方で自分を表現していいんだ、って。
どんな人だって、自分の事をわかって欲しいひとに分かってもらえなかったら、
すごくフラストレーションがたまるでしょう?怒りっぽくもなるでしょう?
何で分かってくれないの!って声を荒げてしまうでしょう?
こんな信じられないような変化が、セッション毎に起こるわけではないのですが、
こういう時間を繰り返し持つことによって、
長期的に見たら、その子の世界観や、自分の中の自信に、大きな影響を与えていくのだと思います。