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日常からちょっとスピンオフした過ごし方をする

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フラメンコの本番が終わった。
なんだかいい夜の過ごし方をした。

夕方5時前に場所入りし、リハーサルをへて、本番が1部2部。
夜10時半ころショーが終わり、急いで汗にまみれた衣装をスーツケースに押し込み
そのままお店でショーを見に来てくれたお客さんと飲んで喋って
時計の針が真夜中をすぎて半周したころで家の最寄駅についた。

本番の高揚感と、その特別な時間が終わった感覚を まだベットに入って眠ることで終わらせたくなかった。
疲労感を感じなかった、当日を迎えるまでいつもやらない量の練習をしてヘトヘトになっていたのに。

そのままガラガラとスーツケースをひきづって近くのカフェバーに入ると
お店の人が、スーツケースお預かりします、と自然に転がしていった先には、大小5つくらいスーツケースがおいてある。私以外にも沢山の荷物を抱えて出かけた人達がこの場にこの時間に集っている、という事にすこし驚く。

禁煙の席を案内してもらい、
お店の人がフード、ドリンク、デザート、三冊のメニューを持ってきて説明しているときには
すでに赤ワインをグラスで頼むことはすでに決まっていたのだけど
今日のリハーサルの時から家から持って出ればよかった、と少し後悔していた小説をはやく読み始めたくなって
イタリアワインを注文してから、「ちょっと荷物をおいてきます」とお店の人に伝えて、
並べられたスーツケースの中から自分の小さな青いケースをひっぱり、ゴロゴロと転がして横断歩道を渡る。

帰宅したら
玄関だけ電気がついていて、子ども達からメッセージが書かれているホワイトボードが真ん中においてあった。

”おかえり。 フラメンコたのしかった? お風呂にお湯入ってるよ。
はやくあいたいね!
ママが帰ってくるころ たぶん起きてるよ。いっかい部屋にきてみてみて寝てたら
またあしたおきてたらこえかけてね!!
大大大大大大好き!”

子どもたち・・・ 
彼らがぺちゃくちゃと喋りながら寝支度をする風景が思い浮かぶ。

ありがとう。
私を応援してくれて、気遣ってくれて、思ってくれて、愛してくれて。
ほんとうにありがとう。

心がじわっと熱をもっていくのを感じながら
汗臭いしめった衣装を無造作に椅子の背もたれにかけ、
数か月前に図書館で予約していて、数日前にやっと届いた小説を机からとり上げる。
本番が終わったら読もう、と心にきめていた。

真夜中なのに意外に暖かったので着ていた皮ジャンを脱いで、
斜めまえについているジャガード織のバルーンスカートのポケットに携帯と財布をつっこんで
本を小脇にかかえて ゆっくりとカフェバーにむかう。

一端帰宅したらもう出たくなくなるかな、というのは杞憂だった。

オフホワイトのハイネックの薄いニット 
半袖から出ている腕に気持ちよい風があたる
少し高めのヒールの靴がなだらかな下り坂のアスファルトの上できゅっきゅっ となる。

ふたたびもともと案内されていた薄暗い店内のソファーに腰を下ろしたと同時にボーイがきて、
すでにテーブルに用意してあったワイングラスに赤ワインを注ぐ。

天井の高い店内
左隣には パソコンをパチパチ叩いて仕事しながら 本格的に食事をしている人
右ふたつテーブル向こうには T-シャツのサンプルをお店の人に見せながら熱心に話をしてる人
会話がはずんでいる華やかな女性たち
昼間にはない空気がお店に漂っている。

そして、私も今夜は その風景の一部であるのだ。

ほぼ毎日通り過ぎてるお店
まだ日が明るい時に入ったことがあるお店
ものすごく日常に近い場所なんだけど 日常からすごく遠い時間の過ごし方。
時間が真夜中をすぎると 街も、交差点も、お店も全然ちがう匂いだし 
”この時間にこのお店で読書している私”も 私が初めて体験する ”私” だった。

すぐそこには、私を思って眠りについた子ども達がすやすやと眠っていて
少し前には、アーティスト達の”瞬間”に繰り出されるエネルギーの刹那の中で踊っていた私がいて
その中間に真夜中にテーブルのろうそくがゆれるお店で読書している私がいる。
もう少ししたら、私は日常に帰る。

あと数時間したら、空が白みはじめ、子ども達が起きてきて、朝ごはんを作るという日常があたりまえに始まる。

そんなことをぼんやり考えながら、本を読み始めると引き込まれていき、
改めて この異空間、異時間に、小説という異次元に身をゆだねられることを甘受する。

小説にはアーティストなど、自分の体験を重ねられる人物が複数おり、なつかしい土地がでてくる。
彼らの心の細かいひだや揺れ、街の風景に、自分自身を放りだす。

ストーリーに自分をただ浸透させる、その無力感、その感覚は好き。

お店の閉店時間が近づいてきたけれど小説はどんどん展開していく。
区切りのいいところでお店をでて、また夜風にあたりながら短い距離を歩く。
そして、子ども達の寝顔をみてから、もう随分ぬるくなっている子どもたちが私のためにいれておいてくれた湯船に熱いお湯を足して体を沈める。

私の将来に こんな夜の数時間があるなんて 想像したことなかった。
フラメンコの本番、子ども達からの心があったまるメッセージ、小説とワイン、真夜中の空気 
全部ひっくるめて私の感情をゆさぶったもの。

過去のいろんな事の出来事の重なりが 重なって重なって重なって起きた
偶然であり必然でもある 今日の陽が落ちてから朝になるまでの出来事と時間。

日常から ほんの数ミリ外に出る事は なかなか難しい
子どもを育てていると 私は自分できめた優先順位は 基本変えない。
だけど、本番、 とか、そういう外的きっかけがあって、それに合わせなければならない時
友人たちの協力を得て 自分が日常やらない自分を生きられるような段取りをする。

海外に旅行に行く、という感じの、ガツン と日常から離れるのではなく
すぐそこ に日常を感じながら 確実に日常ではない自分を生きている時間は
なんとも甘美で贅沢にかんじられた。

小説の続きが早く読みたくて
ソファーにふわふわの掛布団を持ち込んで、あったかい紅茶を淹れて、続きに没頭する。
布団と自分の体のまわりの空気があったまって、やさしい空気に包まれて心地いい。
しばらくすると眠気と心地よい疲労をかんじて、朝までの数時間を寝る事にする。

朝ごはんを作って子ども達を送り出したら、夕方までは何も予定を入れていない。
昼前には小説を読み終えることができるだろう。
残りのページが少なくなっているのが残念でならない。

本を読み終え、衣装など諸々を片づけたりしていたら、すぐ夕方になる。
このふわふわとした時間の過ごし方と あやふやな自分のアイデンティティーの感覚ともまたしばらくさよならだ。

そうしたら、当たり前に同じことが繰り返される日常をまた積み重ねていく。
このかけがえのない満たされた日常があるからこそ 
すこしそこからスピンアウトした時間の過ごし方をきらめきに感じ 
こんな風に人生が歩めていることに心から感謝する。




by totoatsuko | 2016-10-18 09:27 | Comments(0)
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