ヒロインジャーニー : ペルセウスによる救出

(続き)ポリデクター王は、無理やりダナエという女神と結婚しようとして、邪魔者である息子ペルセウス(アテネの異母兄弟で、父はゼウス)に、メドゥーサの首をとってくるように命じました。誰も生きて帰ってきたことがない仕事です。
アテネは、旅に出るペルセウスに6つの品物を与えました。
1.羽のついたサンダル
2.かぶると自分の体が相手から見えなくなるヘルメット
3.魔法のバッグ
4.かがみ
5.剣
剣は男性を象徴するアイテムですが、その他はすべて 女性を象徴するアイテムです。
言い換えれば、男性であるペルセウスは、剣 という男性的な武具だけでは十分でなく
女性的な物の助けがあることによって行いを全うする事ができたのです。
神話は長い年月をかけて人間によってつくられたお話しですが、
後に心理学という学問用語でいう ”男性的な要素、女性的な要素” (考え方とか、受け止め方とか、アクションとか)どちらもが、物語を展開し簡潔させるための要素としてお話しのベースになっていることがよくあり、人間の心理の本質を反映しているともいえます。
ペルセウスは、姿を見えなくするヘルメットをかぶり、羽のついたサンダルを履いてメドゥーサに近づきます。その存在を察したメドゥーサは、ペルセウスの方を見ますが、差し出された鏡をメドゥーサは直視することができず、その隙に、ペルセウスは剣でメドゥーサの首を切り落としました。
なぜメドゥーサは鏡を直視できなかったのか?
それは、鏡に映る、苦悩と怒りに満ちた自分の姿が現す、
”自分の内面の苦悩” と向かいあうことが出来なかったからです。
メドゥーサの苦悩は、
アテネやペルセウスの心の内に住む frightened inner child の象徴でもありました。
アテネは、ゼウスの子どもとして生まれ、常に父とともに戦い、男性社会で女性であることを捨てて、男らしく 雄々しく戦い続け 勝利をもたらしました。若き日のメドゥーサが持っていた、可憐さ、外見の女性的な美しさ、従順さを封印しなくては 戦いの女神アテネ という人生を生きる事が出来なかったのです。
それ故に、アテネは、自分が否定し続けてきた自分の一部を象徴するメドゥーサが犯される、という事実は何ものにも代えがたい出来事だったのです、しかも自分の神殿内で。
アテネは無意識に自分自身をメドゥーサに投影し、あたかも自分自身が侵されているように感じたのです。
異なるバージョンでは、
美しいメドゥーサに そのような美しさを持っていないアテネが ”嫉妬して” メドゥーサを怪物にした、
という理由付けがされています。
アテネという女性が、その一生を生きる中で経験する
表面的には気づかれない葛藤や苦しみという側面から考えると、
”自分自身が否定してきたもの、生きていくためには否定せざるを得なかったものを他者に投影して”
何かのアクションをとる というのは、私たちの日常でもよくみられる事です。
自分が無意識に自分自身で否定している、あるいは放棄している要素を持っている人をみて
その人を抹殺しようとするのか
その人の中に、失われた自分を見つけ、その人のその部分を擁護し育てようとする過程を通して
自分が否定してきた自分を復興しintegrate -自分の一部に組みこんでいき、
よりバランスのとれた新しい自分の状態に己を成熟させていくか。
そして、ペルセウス。
彼の祖父は、将来孫によって殺される、という予言をうけ
ペルセウスが生まれたら、彼を海に流して捨てました。
そして、彼の父・ゼウスもペルセウスを遠ざけました。
ペルセウスこそも、男性社会の犠牲者であり、
疎まれた子どもとしての、怒りや悲しみを抱えていたのです。
また、メドゥーサは、怪物にされる事で、生身の世界を生きる事が出来ない悲しみ、
犯された事にたいする悲しみと怒りを内包していました。
また、怪物にされる前は、蝶よ花よ、と男性たちにもてはやされていましたが、
男性優位社会の価値観の中で
自分のセクシュアリティーや従順さ 外見の美しさしか求められていない事への悲しみや怒りも
当然、心の奥深いところで経験されていたことなのです。
心理的に
アテネは、自分の中の否定されたinner child や femininity を救出し、
自分に統合し、よりバランスのとれた神となるために、ペルセウスを支援しなくてはならなかったのです。
また、ペルセウスは、メドゥーサの怒りと悲しみに挑み直視することで、自らの痛みと向かい合い、Hero's journey を生きていくのです。
メドゥーサは、かがみによって映し出された己の心の奥深くの痛みと苦悩を直視することが出来ませんでした。patriarchy (男性優位社会)の価値観により傷つけられたことによる怒りに常に満たされていた彼女の意識が、ふっと、自分の内面の痛みに向けられたとき、ペルセウスの剣が首を落とす隙を与えたのです。
(続く)
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