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Peak experience - 難聴の子供たちと

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難聴、ときいて皆さんはどういうイメージを持つだろうか?

私が人生で初めてきちんと難聴の人と触れ合ったのは、ニューヨーク大学時代、難聴の子供のための幼稚園に音楽療法士のアシスタントとして入ったときだった。

勉強していくうちに、難聴の子供・大人が使っている補聴器の種類は色々あって、それぞれ聞こえ方が違ってくる事がわかる。音が全く聞こえないわけではないのだ。

手術をして頭の中の音をフプロセスする神経にチップを埋め込むコクリア インプラント (=人口内耳)。耳に装着する、音を拡大する補聴器や、FMの受信機のような補聴器で、マイクを通して話された音をピックアップするもの。

それぞれの難聴のレベルや、補聴器の種類によって、聞こえ方が違う。

総じて共通する事は、雑音(バックグラウンドミュージックとか、他の人の話し声だとか)が多いと、ききとりたい人の声が聞こえにくい、という事。

だから、様々な音がいっしょくたんになって拡大されて耳に入ってくるなかから、ききたい音、その雑音のなかから探し出し、ピックアップすることを学ばなくてはならないのだ。

一方で、楽器の音は格段に大きく、彼らにとって聞き取りやすい。

難聴の人の特殊なニーズについて書き始めるときりがないので、今日はここらへんで切り上げて、その子供たちのセッション中のある印象的なシーンをご紹介したいと思う。


1グループ5人の、言葉がない子供たち。
基本的なセッションの流れは、最初にセラピストがキーボードで伴奏しながら、ハローソングを歌う。一人一人の名前を歌に盛り込み、歌を通じて”こんにちわ”と歌いかける。
中間は、グループのニーズに合わせたアクティビティーをやって、
終わりの歌、となる。


一人の子供が、ギャザリングドラム (数人でたたける大きなドラム)を、ポン ポンと何気なくたたき始めた。
すると、他の打楽器で遊んでいた子供が、そのドラムの音に気づき、そのドラムに近寄り、たたき始めた。最初にたたいていた子は、自分のたたき方と違う友達のドラムの音に気づき、自分のたたき方を変えてみた。
そうこうしているうちに、他の子供もドラムのまわりに集まってきて、みんなドラムをたたき始めた。

ひとりひとり、たたき方が違う、出す音が違う。
人数が加わる事によって、結果的にドラムが出す音はだんだん大きくなって、教室中ドラムの音、リズム、旋律と振動で満たされた。最初一人が何気なく叩いていたときとは大違いだ。

子供のドラムを叩く態度も音が大きくなるにつれて変わっていく。
なにげなく手をドラムに当てているのではなく、自分の手がドラムの皮に当たる感触、それに反映して毎回創られる音が違う事への気づき、耳が受け取る情報と、体が感じる感覚と、目から入ってくる情報が、統合される。

いま、自分の手が皮にあたって、ドーンという音を発して、音の振動を手だけではなく体でも感じる。

このようにあっさり一文で書いたけれど、
目と耳と体が得る情報を統合し、理解する、ということは、障害を持っている人にとってはとても大変なことなのだ。

部屋いっぱいの振動と音を作り出していた瞬間の子供たちには、
日常常に感じている、音と関わる事への難しさはなかった。

自分が作っている音は全て聞こえている。
友達が作る音も聞こえていて、音どおして会話が成り立つ。
そして、自分が出したい音を作り出せている。
グループ一人一人が、他のグループメンバーの音に音を足して、自分一人で出来る限界以上の"音の世界”が創られている。

ここには、”間違い”"正しい”という概念がない。
日常スピーチセラピストや作業療法士、先生などから世の中を生き抜くために色々教えてもらう世界とはずいぶん違う。

どんな音をだしても、それはグループの音に何か付加価値をつけていることになるのだ。
それに、何より、子供達は、音の世界で楽しんでいる!

ドラミング中の子供たちの表情は真剣そのもので、
一つの事に1分以上集中できないのに、しばらく”合奏”は続いた。

教室をその時偶然とおりすがった人からみれば、
単なる無秩序なドラム叩きにしか見えないだろう。

でも、神経をとぎすまして、その瞬間瞬間、子供たちの表情、体の動きが教えてくれるサイン、目に見えないエネルギーを注意深く観察しているセラピストには、言えることがある。

それは、無秩序に野放しにやらせているドラムたたきではなかった。
信頼できるセラピストが見守り、”もっとやってもいいよ”という無言の許可を与えてくれる事 (日常生活で、こんなドラム叩きをやったら、すぐさま止められるに決まってる)。彼らの自然に生まれてきた音への興味を刺激し、広がりをもたせていくこと。

この、ドラミングの瞬間は、子供たちが、いままで人生で経験した事がない種類の音との出会い、音を自由に操れる喜び、音を耳だけではなく、体や、目をつかって関わる事を体験。 こどもたちが、これ程音の世界を自由に感じ、自己表現の手段として操ることが出来たのは、これが、人生ではじめてだったはずだ。
by totoatsuko | 2005-10-30 22:58 | Comments(2)
Commented by ma-mi- at 2010-01-23 01:16 x
今学期プラクティカムでコクリア インプラントの手術を受けた子供達と音楽療法をするので、参考になりました。ありがとうございます。
Commented by totoatsuko at 2010-01-23 06:09
よかったです。
過去のMTジャーナルにも、本の中にも、それに関連する論文ありますよ。
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音楽療法士(GIM)のつれづれ


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