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カウンセリング@代々木上原・音楽療法・心理療法 GIM

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くすり

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先日癌をわずらっている年配の男性と音楽療法セッションをすることになったのでNursing homeへ向った。

まずソーシャルワーカー、看護婦さんから彼や彼を取り巻く家族の状態をきく。
そして、ソーシャルワーカーが私を彼に紹介してくれた。

彼は、4人部屋の自分の部屋にいるのがすきではないらしく、
車椅子で廊下の真ん中、ナースステーションとレクリエーションルームが見渡せる場所に陣取って、車椅子をゆすっていた、あたかも自分を慰めているように。

ソーシャルワーカーが話しかけると、かれはとてもSweetな笑顔を見せ、
音楽が聴けるなんて、ナイスだよ、
とゆっくりと柔らかい声で私の目を見ながらぼそっと言った。

じゃぁ、まってて、ギターを車から出してくるから。
私はそう言って、彼のもとをいったん離れた。

そして10分後、戻ってくると、まだ同じ場所にいる。

初めてのセッションだし、彼を嫌いな部屋に戻すよりは、彼の心地よいこの廊下の真ん中で(人の流れの邪魔になるし、Privacyもないけれど)やろう、と私は決め、彼のそばに椅子をぴっぱって来る。

何を歌おうか、と彼の表情、体のありかた、目に見えないけど彼が発しているエナジーに集中する。ふと目をふせると、普通の人の2倍以上むくれてしまっている足首が目に入る。

15分前には見なかった、手や腕の震えに気づく。

どうしたんだろう?気にしながら、ゆっくりとギターを弾きながら歌いかける。
彼は、遠い目で私を見る。ギターに目をおとす。

私は、彼のエナジーがどんどん中に引いていって、
Here and Now:この瞬間、この場からフェイドアウトしていくのを感じる。

少し大きい音で呼びかけてみる。

それには答えず、かれは肘をついて顔を支えて、眠ってしまった。
やっと腕の震えはとまった。


15分前までは、意識がはっきりしていたのに、あんなに音楽を楽しみにしていたのに、どうしたんだろう? 不思議に思って、セッションを終えた後看護婦さんにききに行く。

「ああ、ほんのちょっと前 XXX (くすりの名前)をあげたの。腕の震えや眠くなるのはそのせいよ。2時からビンゴが始まって、施設のお年寄りがみんな集まるのだけど、人ごみのなかで不安な気持ちが高まってしまう彼を落ち着かせるために、いつも朝と昼に処方するの。」


くすり。

治療には不可欠なものだけど、
その人本来のすがたを変容してしまう、本人の意思とはうらはらに。

私の訪れた時間がもうすこし早かったら、くすり抜きの彼と、人と人としてのコミュニケーションがとれたかもしれない。くすり前の一瞬のやり取りから感じた彼の暖かいハートに触れる事が出来たかもしれない。

そうおもったら、とても残念な気持ちだった。


もうすこし親しくなったら、提案してみようか、音楽が彼の不安感を下げる事ができるかもしれない、って。
by totoatsuko | 2005-10-20 03:50 | 音楽療法セッション例 | Comments(0)
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音楽療法士(GIM)のつれづれ


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