昔の歌をたどりながら~
お話になっている歌がとてもたくさんあることに気づかされます。
例えば今日は終戦記念日。
戦友 という軍歌は14番までありますが、
戦地で友が弾に撃たれる、見捨てられぬ思い、しかし生きねばならぬ思い
お国のため、故郷から遠くはなれて戦う身の気持ち、
友と肩をいだいて語り合ったこと、身の上話、自分が死んだら骨はたのむぞ
友の死を親にあてて書きながらほろりと落ちる涙
そんな内容が歌詞になっています。
戦争は、90年以上も生きている方にとっては第二次世界大戦だけではありません。
西南戦争をうたった 田原坂 も、西郷隆盛や薩摩軍をしのぶ熊本民謡で、
手拍子で朗々と みなで歌いました。
ろうろうとうたいたくなるような、シンプルかつ、味のあるメロディーと歌詞なのです。
当時の多くの曲のメロディーはとてもシンプルで、同じ旋律の反復もおおく、
早さもはやくないので、どのきょくもしみじみと歌詞を味わいながらきいたり、歌ったりすることができ
テーマに沿った歌をさがし、それぞれの歌詞を読みこんだり、旋律を歌ったりしていたら、
歌は、私が生まれる前の情景や、その時代に生きた人の気持ちや生活を歌ったものなのに
なんだかとても共感できたり、おもわず ほろり と涙がさそわれたりします。
どの時代に生きても、人が感じる喜びや悲しみや辛さ、誰かを思う気持ち、というのは
かわらないものだと感じています。
歌って、音楽って、ほんとうに心に強く、そして豊かに働きかけますね。
NYの癌の病院で音楽療法をやっていたときは、だいたい個人セッションか、カップル、あるいは家族単位でした。患者さんや家族の心に浮かんだ歌をつなげて、心の情動や記憶に寄り添う、という 歌の選曲の担い手が参加者、という方法でした。彼らの無意識の選曲やリクエスト曲は、彼らの無意識に感じている気持やメッセージがこめられており、曲を吟味することで、そのときその時の参加者の心のニーズ(例えば追悼だったり、カタルシスだったり、悲しみや怒り、懐かしさ、楽しい思いで、宗教、スピリチュアルな感覚)に答え、演奏・歌唱と対話をとおして、彼らのこころに寄り添っていました。
今の施設では、1セッション15人~40人位の規模のグループなので、前者のやり方は成立しません。
この単位のグループをまとめるには、やはりセラピストがリーダーシップをとっていく必要があります。
ですから事前に私が大きなテーマをきめて、それにそって、 「私の思う」テーマにそう歌を選んで、セッションの流れを組み立てる。ある意味、NYでやっていたセッションとは真逆の歌の使いかたなので、セッションを準備する過程はとても興味深いものです。
これは、もう、どうしても「私の主観」から逃れることができないのですが、
それでも、私なりに、「当時に生きているのを想像して、感情も移入して」参加者の方の気持ちや心理的ニーズを想像して、私だったら、そしてあの人だったら こういう歌を口づさむのではないか、この歌をうたったら、あの歌が浮かんでくるかな、などと思いながら、歌を構成しています。
セッションでは、パワーポイントに歌詞を打ち込んでホワイトボードに写していますが
音楽だけではなく、当時の写真も随所ずいしょに織り交ぜて紹介しています。
お盆の時期は、絞りのゆかたを着てセッションをしました。
夏物の子どものちりめん という生地でつくられた大正時代の着物も持っていきました。
特に女性のかたは、興味を示して生地にさわったり、いろんな角度でみたり。
昔お針子をやっていた。呉服屋で働いていた、
ちょっと背中がぐちゃってなってるわよ、しゃんとしたに引っ張りなさい、などなど。
京都出身の男性の方は、着物の卸問屋をやっていたとか、小売りをやっていたとか、
普段話さないような、ふだん 思い出しもしないようなことを思い出して、当時の気持ちや情景を味わい、「仲間と共有すること」 で 「もっと仲間意識が強まる」 という コミュニティーミュージックセラピー のような現象がおこりました。
人は、やっぱり 人に必要とされているから頑張れるところがあるし、
人とつながっていることで、心をつよくもてたり、気が張って生きていられるところもあるから、
ただ毎日、同じ場所に暮らしてる、あるいは同じ場所のデイケアサービスを受けている仲間、という以上の
「つながっている感」を盛り立てることも大事だとおもっています。
勿論、ゆかたをきて盆踊り しました。
施設でくらしていたら、お祭りさわぎも、昔はいつもきていた着物やゆかたに触れる機会もありません。
いぐさで編んだ笠をかぶって踊る盆踊りの曲もありますが、
その笠の井草のにおいがまたなんともいえず、独特のにおい。
日常は、アートにあふれていて、五感をつかって生きています。
お料理のにおい、お料理する音、洗濯の音、石鹸のにおい、手触り、野菜の手触り、におい、電車が走る音、止まるおと、風の音とそれが運ぶにおい・・・・
全部、アートだと思う。アートは、芸術家が作るものだけではないですから。
音楽療法の時間、ということになっていますが
視覚、聴覚、嗅覚、肌感覚 そして こころ への刺激
五感をつかって楽しみ、情動ゆたかな時間を一緒に参加者の人とつくっていくべく行う
わたし一人でおこなう 「準備時間」。
いろんなアイデアを思いつきながら、生きた時代や気持ちや季節をなぞる時間。
あたらしい試みを、自分の中で起こる変化をたのしんでいます。
女性のための 音楽と色と声のリラクゼーション・ワークショップ@パークサイド広尾レディースクリニックは
毎月第一土曜日10時半~12時半 3000円。
お問い合わせ・ご予約は お名前、ご連絡先をそえていただいて、hiroo-pc AT healthcarenet.jp まで。次回は9月3日。 小麦粘土もつかう予定です。
音と色をつかったカウンセリング・音楽心理療法のプライベートセッションのご予約HPはこちら