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カウンセリング@代々木上原・音楽療法・心理療法 GIM

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隠された日記2

ある日突然失踪した母の娘であり、
母親の主体性を受け入れることが出来なかった父の娘であり、
恋人でもない男性の子供をうっかり妊娠してしまい、中絶を考えながらカナダから故郷フランスに休暇をとって戻ってきた娘の母親でもある女性を演じるのは、カトリーヌ・ドヌーヴ。

彼女は、両親はうまくいっていたと思っていた。
母親は、英語や写真など、吸収したものを一緒に子供達(自分と弟)と楽しんでくれた。
女性は経済的に自立して自由に生きるべき、そのためにしっかり勉強しなさい、と常々言っていた母。

何故かある日母は何も言わず失踪。
父親は、大好きな母のものを全て焼いてしまった。
母が失踪した日、夜中泥まみれでかえってきた父は、母のことは何も話さず、早く寝るように、としか言わなかった。
翌日、父は母を捜した。

どうしてか分からないけど、母は自分達に何も言わずに失踪した。
父も、何も分からない、と言う。
自分達は、何故だかわからないけど、捨てられた。

「これからの女性は自立して、自由に生きるべき」 と繰り返しいわれて育った彼女は、
医者になり、個人クリニックを開設し、メガネ屋を営む男性と結婚し、一人娘を設ける。
男性は、忙しい妻のサポートをし、娘に食事をつくり食べさせ、と 今でいうイクメン(育men)。

娘は成長し、機会を得て、カナダへ渡り仕事をしている。
何時結婚するの? と田舎に帰ったらまわりが聞いているのをみると、30台半ばから40台前半なのか。

自分の母が望んでいた様に (母親に対してあい反する強い愛憎を抱えている)、
自分は医者になり経済的に自立しているし、家庭も夫と共同で支えながら育んでいった。

でも、娘はそれを否定するように、
仕事が忙しく主婦のようには娘と時間をとってやれなかった自分を否定するかのように、
結婚もしないし、子供も生まないし、
自分の元を去って、
自分を捨ててカナダに行ってしまった。

そして、突然休暇がとれた、と帰ってきたが、妊娠していることは自分に隠している。

娘のことを心から思っているのに、
素直に娘からのプレゼントを受け止められず拒否したり、
思っていることを素直に話せない娘との関係。

しかし、娘が見つけた自分の母親の唯一の形見・日記が彼女の過去と将来の見え方を劇的に変える。

愛妻家であったにも、妻に捨てられ、
母親に捨てられた自分達を男手ひとつで育ててくれた、と慕っていた絶対的な存在であった父が、

父は愛妻家ではなかった・・・
女はこうあるべき、と母を家に閉じ込め、
自立した女性である自分をも否定するような考え方の持ち主であった。 
「母は自ら失踪した」、と言っていたのは父の嘘で、
もしかしたらあの日母を殺し、泥まみれになってどこかに埋めて帰ってきたのかもしれなかった。


今まで信じていたものは何だったのか・・・


自分は一人だって生きていける、と思っていた、その自分の膝が崩れ落ち立ち上がれなくなったとき、
夫がいた。無条件に受け入れることが出来なかった娘がいた。
妻にふりまわされてしょうもない男、と思っていた弟もいた。
誰も立ち上がれない自分を責めなかった。

母は、自分達を捨てたのではなかった!
一生懸命悩み、
一生懸命自分の人生を生きようとし、
一生懸命 夫の要求にこたえようとし、
一生懸命考えていた、どうやったら自分も子供達も幸せになれるか。

時代や夫が要求する妻をどうしても演じることが出来ず、
クリエーティビティーと好奇心を抑えることが出来ず、
それでも、一生懸命時代と夫にあわせようとし、葛藤していた。

知らなかった母親の心の苦しみを知る、母の日記を読むことによって。
母が失踪して以来、母の話をすることはタブーだった。
でも、いま 皆が母の話をしている、母のことを知りたがってる。
母について話していいんだ。
母が好きだった、と言っていいんだ。


そして、医者になってもなお、満たされきっていなかった自尊心が満たされていく。
自分は、世間から後ろ指さされるような母親の娘ではなかった、
母は、時代の先端を生きようとした女性だった、
自分は、捨てられた子供、ではなかった、

と知って。

幼少期の出来事は、もつれたものは、もつれたまま人生、墓場まで心に影を落としながら存在しつづけうる。
しかし、何かのきっかけで、そのもつれたものを見つめ、ひも解く機会を持つことが出来たら、
世界の見え方がかわる、生き方、人とのかかわり方が、変わっていく。
by totoatsuko | 2010-12-01 10:52 | Comments(0)
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