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児童擁護施設での記録映画「葦牙」

「今は、自分たちが育った時代と違い、社会が溶けてきている。子どもたちは、母乳と母語をもらって心を育てる。虐待を受けた子どもは心が作れない。みどり学園の先生たちは、かつて虚弱児を育ててきた経験からこう言った。『虚弱の子は、体から手を入れて心を育てたら治った。でも、虐待の子は、体に手を入れても心がなかった』(!)」
監督の言葉は重く心に響きます。

児童虐待、私たちもその一員である社会の母、父ができることは何でしょうか。
いか、友人の記者からのメールです。
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「葦牙(あしかび)」は、岩手県盛岡市にある、児童擁護施設「みちのくみどり学園」で暮らす子どもたち(7割が親の虐待などで入所)と
その子どもたちを見守る施設の人たち、そして親を3ヶ月にわたって追った記録映画です。
http://www.kazesoyo.com/01intent.html

虐待の現場はないものの、施設で暮らす子どもたちの暮らしから、親から愛情を注がれずに育った子どもたちがいかにもろく、葛藤しながら生きているか、わかります。そして、施設の人たちが、それをどう支え、いかに自分を肯定して生きていけるようにしているのか、示唆に富む映画でした。

映画で印象に残った場面や言葉を紹介すると、5歳の頃から施設にいる太一くん、という男の子(今は9歳だったかな?)に、保育士さんが話を聞いてる場面。
保育士さん「太一くん、施設に来た頃のこと覚えてる?」
太一くん  「ううん」
保育士さん「施設に来た日、太一くん、先生から離れなくて、先生、ずっと抱っこしてたんだよ。
その次の日も、次の日も、友達が『遊ぼっ』て来ても、返事もしないで、ずっと先生抱っこしてたんだよ」
(保育士さんの首に抱きついている、太一くんの写真)
その保育士さんの言葉。
「私たちは『社会の母』」。

何十年にもわたってみどり学園と交流のある大工の男性は、太鼓の演奏指導と太鼓づくりを通じて、子どもたちを育てている。その大工の方の言葉。
「お母さんのお腹の中の子どもは『純真無垢』。太鼓の『鼓動』は、演奏している人と聞いている人、演奏している人同士をつなぐ。『心鐘(心の鐘)』は、何もしなければ鳴らない」。

みちのくみどり学園の園長先生の言葉。
「虐待を受けた子どもたちの境遇は悲惨。でも、子どもたちは必死に生きている。だから、必要なときに、必要な大人が、必要な言葉をかけたら、子どもたちは希望を持って生きていける」

記憶で書いているので、多少、違うと部分はご容赦を・・・。

試写のあと、監督の小池さんが挨拶され、
「今は、自分たちが育った時代と違い、社会が溶けてきている。子どもたちは、母乳と母語をもらって心を育てる。虐待を受けた子どもは心が作れない。みどり学園の先生たちは、かつて虚弱児を育ててきた経験からこう言った。『虚弱の子は、体から手を入れて心を育てたら治った。でも、虐待の子は、体に手を入れても心がなかった』(!)」
それを聞いて、こういう現状を伝えたいと映画を撮影されたそうです。

この映画のすごいところは、子どもたちがすべて顔出ししていること。これは、学園が1ヶ月半かけて親や子どもを説得したから、だそう。そして子どもの母親も顔出ししていて、これはすべて「学園への感謝」からだそう。

監督は、母親=虐待の加害者=悪者というとらえ方も、本当にそうだろうか、と問いかけたかったそう。
母親は、子育てに無関心な父親や地域の中で、孤立して子育てしていたり、自身が虐待の被害者だったりで、一番矛盾が集まっている存在としって、味方したかったのだそうです。

そして最後に、監督は「虐待を受けて一度は深く傷を負った心が、それを超えて、どう回復するのか、その再生のプロセス、芽を描きたかった」。
「人は、そばに誰かいて、話を聞いてくれれば生きられる。人は、他人が居ることによって生きられる」。
「子どもの傍らに存在する大人たちが、どのように配置しているかという社会の在り様が子どもたちの力を引き出す要だと思う」

児童虐待のために、私たちは何ができるのか、そのヒントがたくさんある映画でした。


名古屋では2/6~19日まで上映されていますが、
他の地域については、
ホームページ:http://www.kazesoyo.com/01intent.html
または、記録映画「葦牙」制作委員会の都鳥拓也さん(090-8593-0597)が取材受付なので、問い合わせてみてください。


一人でも多くの人に見て欲しい映画です。しかし、この映画は、登場する子どもたちのプライバシーを守るため、スクリーンの上映のみ撮影を許された作品で、DVD販売、テレビ放映の予定はないそうです。

監督曰く、なかなか上映してくれる場所がないそうです。
ぜひ、自主上映などしてくれそうな団体や施設があったら、そちらも連絡してみてください。

「3日に1人、虐待で子どもが殺されています」というメッセージが胸に突き刺さります。

子どもたち、そして子育てしてる人たちにとって、必要なときに、必要な言葉や手助けができる、
「社会の母」「社会の父」がたくさんいるような世の中になったらいいな、と感じた・・・
by totoatsuko | 2010-01-20 19:28 | Comments(0)
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