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過程を楽しむこと

過程を楽しむこと_d0065558_2248167.jpgある作家が、癌と診断されてからスポーツを見るのが好きになった、と書いていた。

その理由は、感動的な勝利の喜びを共有できるからとか、頑張ってる選手の姿がまぶしいからとかではなく、そのゲームの戦い方が毎回異なり、勝利への、あるいは負けの道がドラマだから、というものだった。

彼女は、ゲームの勝ち負けよりも、そのプロセスを見ている。

この現代社会では、あまり多くの人が持たない視点だけれど、私はとてもとても大事な事だと思っている。人生は大金持ちになることでも、有名になるためのものでも、何かを所有することでもない。しいて言えば生が完結するとき、「いい人生だった」と感じる時間を過ごすこと思っている。

しかし、「幸せ」は、学歴や名誉やお金や物の様には手に入れられない。
自分にとって何が「幸せ」か感じる「自分」がまず存在する必要があるし、
結局のところ何が「幸せだった」と生を終えるとき感じるのかは、その時になってみないと分からないのだ。だから、目先や社会が「価値ある」と認めるものをただただ追いかけて墓場まではしっていくよりは、自分にとって「価値がある」ものは何かさがしながら、生きていくほうが、本当の自分の人生を歩むことができるのではないか?

少し目先の目標 (それも社会一般が価値があると認める事柄の事が多い)にむかってがむしゃらに走り続ける。今が少しだけ苦しくたって、いい大学・会社に入れば、昇進すれば、給料があがれば、BF・GFが出来れば、楽になる、と自分を納得させる。そして、やっと一つ手に入れたら、次の目標に向ってスタートを切る。終わりのないマラソン・あるいは100メートル走。 そんな風にして人生「こなして」いっていたら、寄り道なんてありえない。

人生を「楽しんで」いたら、「さぼっている」という自責の念に駆られるかもしれないし、友達から・同僚から取り残されるような気分にもなりうるだろう、もし「自分」をちゃんと持っていない人だったら。だから、その恐怖を感じないためにも、走り続ける、なんのために走っているか考えずに、考えないように自分のスケジューツ帳を真っ黒にして。

立ち止まって自分の足元の草花の匂いをかぐ余裕もない、動物達との出会いもないし、世界の広がりの可能性も凄く限定されている。

でも、そんなことおかまいなしなのだ。
大自然や自分自身との対話、家族や恋人との深い心のつながりや、人とのたわいもない会話の時間は、つかの間の休息、あるいは家族サービス・恋人の機嫌取り以上のなんでもなく、自分の得ようとしている何かにたどりつくためには、回り道にしか感じられない人がたくさんいる。

そういう人は、ちょっと心に尋ねてもらいたい。
地位や、名声や、お金や、物質的豊かさが、本当に心を満たしてくれるのか。
それらを追いかけることにより、それらに走らされ、本当はどう人生を造って生きたいのか分からなくなっているのではないか?と。


チェコを旅行していた時泊めてくれたDavidは、初めての試みだったにもかかわらず、去年エベレストの頂上にたどりつくことが出来た数少ない人の一人だ。彼が言っていたのは、エベレストに上る人の中にはアメリカのバンカーなどのお金持ちで達成欲が以上に強い人が多いと。エベレストも「登山を成功した」と履歴に加えるため一つの項目に過ぎず、そのプロセスを楽しもう、という人はほとんど居ない。彼らは、出来るだけ早く上って、早く下山しようとする。そして多くの者が途中で挫折する。
山は天候に左右されるし、空気の状態も気温も変わる。それを無視して、自分で山をコントロール出来るような気になって、ただ頂上に立つことだけに意味を見出していたら、絶対に本当のゴールには行き着けない。

そう彼は語っていた。

成果主義とか、時間の流れが速いこの時代に、今自分が歩いている道のり、空気、環境を楽しもうよ、といっても無理に決まってる、と一蹴されそうだけど、
今自分が持っているもの、関係、世界、それが一体どんなものかを吟味し、味わったあとでも、次に何を手に入れようとするのか決めても遅くないと思うのです。だって、今必死に手に入れようとしているものが、本当の自分にとっては、実は意味のないことかもしれないでしょう?
by totoatsuko | 2006-09-13 22:47 | 日々感じたこと | Comments(4)
Commented by kaerunokosodate at 2006-09-15 06:05
アメリカにいると、時間の流れが日本に比べて緩やかなような気がします。私たちも帰国を考えています。帰国して、日本の時間の流れにどう対応すべきか、考えてしまいます。あつこさんのような考えを持つ人がもっと増えたら、時間の流れも少しは緩やかになるのでしょうか。そうあって欲しいです。
Commented by totoatsuko at 2006-09-15 17:14
こんなメールを寄せてくれた人もいたので、ご紹介。
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とっても共感できる文章でした。人生を「こなす」ように生きてしまうこと、客観的な指標(や他人の目)で測れるものを目標にしてしまうこと…知らないうちにハマリやすいトラップだと思います。

そして最近思うのは、たとえそれに気がついたとしても、違う生き方をするためには実は結構な勇気と自信が必要だということ。周りにそれを理解してくれる伴侶や友達がいてくれることを、本当に幸運に思います。
Commented by totoatsuko at 2006-09-15 22:04
スローライフ、スローフードって「言葉」が日本では流行ってるみたいなので、そういうことに興味を持っている人、今の状態にすこし疑問を感じながら走っている人はある程度の量で存在するのだろうと感じています。
でも、現実問題これまでの生き方を変えるのって、そう簡単じゃない。スルーフードを用意してくれるレストランにいったりして、スローな要素をちょこっと自分の生き方を変えない程度に取り入れてるのかな。
ともあれ、時間の感じ方は自分次第なので、まわりが変わったからといって自分が根本的に変われるとは思わないし、周りが変わらないから、自分も変われない、という理論は成立しないと思います。それは、単なる本質からの逃げと言い訳。。。
Commented by miho at 2006-10-02 20:58 x
この日記を読んでいておもいだしたけど、日本の内観療法って日本人の肌に合っているように思いました。あまり詳しくは知らないのですが、感謝のこころとか、今現在ある幸せに気づかせてくれるような内容の本を読んだことがあります。
お金や名誉=幸せではないことを教えてくれる場所もきっかけも今の社会には少な過ぎると思います。しかし、どこで教えるべきなのか。どのように教えるべきなのか。。。
カウンセラーの仕事を通して、本当の幸せはそこにあるってことに気がつくことが多いです。
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