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スパイラル 1

スパイラル 1_d0065558_1464125.jpg同じ人を長く見続けていると、その関係の色合いが変わってくる。

付き合い始めた頃の新鮮さが感じられなくなって、相手に対してドキドキしなくなったから、もう別れよう、といえないのがセラピストークライアントの関係。

というよりは、クライアントとの関係に、常に深まっていくことを求めているのが、間違いなのだ。
関係は色んな色合いに変化していくもの。相手に対する感情も、関わり方も常に変化している。
自分が仮定するものを求め続けていたら、目の前にいる相手を見失ってしまうし、その結果関係は破綻するだろう。

関係は、言ってみればスパイラルをたどっていくように変化していく。
出会いがあって、お互いを知ってく過程があって、その発見に一喜一憂し、そして終わりがある。そして、その過程ではぐくまれた新たな相手の側面を、その過程で変化した自分が受け止め(新たな出会い)、よりその発見を知っていこうとし(中盤)、より深く相手の事を知り、関わっていく。そして、また終わりがある。

出会い、中盤、終わり、は円を描いているのだけれど、同じ出会いの局面に立っていても、毎回違うステージに立っている。そう、まるでスパイラルをたどっているような感じ。そのサイクルを繰り返すごとに、その人との関係が深まり、それぞれが個人として成長・変化していく。


例えば
もうセッションを始めて何ヶ月もたち、心の深い繋がりを築いていたアン(仮名)が、もう来週から来なくていい、と言う。それは、彼女の様態が急激に悪くなり始めた頃の事だった。

(こんな事は、しょっちゅうあるから、とくに書き出すこともないと思っていたけれど、ある人が似たような状況に対面して困惑していたので、ここで私のいち体験をシェアしようと思います。)

彼女の心に何が起こったのだろうか?

きっとそれは、今までの自分でない自分を私の前にさらすのが嫌だったのではないかと思う。
病気の進行によって変わっていく、自分の顔つき、体、行動範囲の制限、
ある意味、自分がコントロールできない領域で「自分が自分自身でなくなっていく」プロセスが起こっているのだ。自己の喪失、それは、とてもとても恐ろしくて、腹が立って、悲しい心理体験である、体験した人にしか分からないかもしれないけど。

お化粧をしたり、特別な洋服を着て、自分が望む自分のイメージを作るのとは、訳が違う。

アンはその自分自身の変化:どうなってしまうのだろう、という事に対する恐怖と変それらの感情を抱える新しい自己像を掲げて、新しい関係を私と持つことは、相当な心のエネルギーが必要なのは想像に難しくない。

もう今までのようにアツコに受け答えできない。作り笑いすらできない。
私が、「無理して私のために何かする関係じゃないのよ。私はあなたのそばにいて、あなたとの時間と空間を共有するために訪れているだけなのだから」と言っても、彼女の気持ちは軽くならないだろう、心にひびかないだろう。

何故ならアンは、自分自身の時間や空間が、自分にとってどういうものなのか、その意味を見失っているのだから。新しい自分がアツコとの関係を再構築するのは、そう簡単じゃない。

(相手と状況にも寄るけれど)、そういう時は、クライアントの意思を尊重して、少し距離をおく。クライアントを見失わないように、看護婦さんや家族との連携を大事にしながら。
私との関係だって、音楽だって、いつもいつもポジティブに働きかける万能なものではないのだ。

(続く)
by totoatsuko | 2006-03-13 14:06 | 日々感じたこと | Comments(0)
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音楽療法士(GIM)のつれづれ


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